昨年末に事務所の大掃除をしていたら、
「海軍士官初級心得」という小冊子が出てきました。
相当古いもので、表紙に
「将来高石工業の幹部たらんとする人はこれをよく読みなさい」
と鉛筆で書いてあります。この筆跡は弊社の創業者である、私の祖父のものです。
海軍士官初級心得」は海軍兵学校を出て間もない若い士官に渡されたもののようです。今でいう「初級ビジネスマナー」というところでしょうか。
中を読んでいくと、言い回しは多少古いものがある感じがします。それでも今の毎日のお仕事にも十分通じるものがあると思います。
たとえばこんな感じです。
◆ 信ずるところを断行せよ
事象の千変万化する海上生活においては、熟慮断行の余裕のない事が多い。日常研鑽によって得た信念にもとづいて、迅速果敢に決断をせよ、また如何なる場合にも、士官たる者は率先垂範が必要であり、躊躇逡巡はますます消極的気分を助長させる。信ずる処を断行して経験を深めよ。
◆ 自身で問題を解決せよ
ある問題に遭遇したならば、その事が上官の裁決を必要とする場合でも、できるだけの情報を集めて、自身で考えた最良の手段を示す必要がある。何か事が起きた場合、みずから考える事をせずして「どうしたらよいでしょうか」等と伺いをたてる者があるが、その様な士官は、将来重い職責を課せられた時、適切な判断を下すことが出来ない。
◆ 命令は忠実に、その実施は拙速・確実であれ
① 上司から調査又は立案等を命ぜられた場合は、すぐ実施せよ。「明日にてなさん」は、禁物なり。
② 上司の希望であっても、命令と考えて実行せねばならぬものがある。よく上司の意のあるところを察知する努力を欠いてはならない。
③ 上司には誠実な尊敬をもって接すべきである。意見の相異があれば卒直に述べて教えを請うべきである。部下の前で上司の悪口を云う様な事は、天に向って唾をするにひとしい。深くいましめるべきである。
◆ 感情に訴える様な部下指導は避けよ
いわゆる、親分子分的な関係をつくったり、自分の好みに合った部下をつくったりすることは好ましくない。将来、誰の下についても、真面目に勤務する良い部下をつくるように心がけよ。
◆ 率先垂範の実を示せ
部下を率いるときは、常に衆に先んじて難事にあたる心構えがなければならない。また、自分が出来ないからといって、部下に遠慮気兼ねをしたり、部下の機嫌を取ったりするようなことは禁物である。
いつの時代になっても仕事人として、リーダーとしての心構えやマネジメントの勘所は同じものなのかもしれません。
この心得は今、私の机の引き出しにあります。時空を超えて、私も祖父の教えに接している気分でした。