正月明けにテレビを見ていたら、グサッとくるセリフに出会いました。
松竹新喜劇の喜劇王、藤山寛美さんの言葉です。
藤山寛美さんは昭和の喜劇王にして借金王、やたけたな「芸人」を地で行ったひとですね。
深夜のけいこ場でのこと、寛美さんの厳しい檄が飛びます。
「お客を笑わしてやっているのと勘違いしているんと違うか。
お客様に笑っていただいているんや。
わざわざお金を払ってお客様は見に来てくださっているんや。
だから、ちゃんとセリフを覚えんかい!」
うろ覚えですが、こんな感じだったと思います。
この一言が「お客様目線」を見事に言い当てていると思います。
お客様が見に来るのが当たり前で自分たちは笑わしてやっている、そういう役者の自分目線でいると、お客様は芝居を見ても満足せず、そっと劇場に足を運ばなくなる。
お客様が何を見て笑い、何に対してお金を払っているのかを常に考えなさい。お金をもらっている以上プロなのだから、いただくお金以上の笑顔を持って帰ってもらうためにこれでいいやと思ってはいけない。もっともっと努力が必要です。そういっているのです。
生で観客の反応がわかり、客の入りが売り上げに直結する演劇人ならでの言葉です。しかし、これは商いをするすべて人に共通する箴言ではないでしょうか。
振り返って自分の会社はどうだろうと思いました。
ここ数年「いい会社」になるべく改善改革を進めて来た。やりがいを感じて働ける、「いい会社」になりつつある。けれどもこれでいいと思ってはいけない。お客様の困りごとに対応し、さらに今までにないことに挑戦しなければいけない。そのたびに「できない」ではなく「どうしたらできるか」を考え続けていかなければならない。私たちはお金をいただくのに値する仕事をしているのか。
お客様に満足していただくために必要な要素は何か。価格、品質、納期、サービス、スピード、レスポンス、安全、環境・・・いろいろあるけれども自分たちがお客様に魅力を感じていただくポイントはなんだろう。それをもっともっと魅力的に感じていただき、お金を払う価値を、感じていただくためには何を磨かなければいけないか。
ただ改善を進めればいいのではない。ただ開発をすればいいのではない。私たちの目指すところは日本の中、世界の中で生き残る会社。世の中の困りごとを解決し、世の中をより良い場所にする会社。キラリと光り、だれもが「いい会社だね」という会社。その線で経営理念も経営計画も目標もある。そのつながりを考えて、組織も行動も働き方も教育も変えていかないといけないのではないか。
原点を忘れてしまうと、お客様は何も言わずに離れて行ってしまう。それは私たちも同じことです。
テレビで見た瞬間は「いいこと言うなあ」という程度でしたが、振り返って自分たちのことを考えるとだんだん言葉に重みが出てきて、眠れなくなりました。ぞーっと背筋が冷たくなる思いです。