今年も遅れていた桜の花がほぼ満開となりました。
会社の近くの「さくら通り」でも桜が咲き誇っております。
私は「桜」といえば思い出すことが二つあります。
一つは「花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ」という言葉です。
この詩はもともと五言絶句です。作者は唐代の詩人、于武陵(う・ぶりょう)で、詩のタイトルは「勧酒(かんしゅ)」といいます。転勤で遠くに行く友を見送った、別れをうたったものです。
勧君金屈巵 (君に勧む 金屈巵(きんくつし))
満酌不須辞 (満酌 辞するをもちいず)
花發多風雨 (花ひらいて 風雨多し)
人生足別離 (人生 別離足る)
これを井伏鱒二は次のように訳しています(原訳はカタカナです)。
「この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ」
「花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ」とは、「有為転変が多い、さよならが世の常の人生だから、メソメソせずに楽しく生きよう」ということでしょうか。
別れの詩なのになんだか明るい感じがします。
別れの情景をイメージすると、中島敦の「李陵」が浮かんできます。おかしいですね、「李陵」には別れの杯の場面なんてないのに。
(その2に続きます)