もうずいぶん以前のことですが、16年前の冬に入院していました。
開腹手術をして、3か月間病院にいました。
手術後には体のあちこちにチューブがついていました。絶食期間も合計ひと月ほどありました。
その病院の中にはスタバ(スターバックス)が入ってました。
でも手術後はまだ刺激物が禁止されていて、コーヒーは飲めませんでした。
そのころに点滴台を腕につけてお店の前を通ると、実にいい香りがします。
冬の寒さを忘れてくれる、ふんわりと湯気の立つような温かいにおいです。
まるでそれは生きている喜びの匂い。それは「希望」の香りでした。
いつかは飲めるようになりたい。飲めるようになったら毎日飲みたい。
その「香り」の前を通るのがいつしか日課になりました。
しばらくして回復してきて、飲めるようになった時には一番に飲んでみました。
まだ牛乳は駄目だったので「カフェラテ」でなく、豆乳入りの「ソイラテ」にしてもらいました。
とはいえ実際飲んでみたら、なんてことはありません。飲んだことのある、普通のおいしいコーヒーでした。
そんなものかもしれません。
それでも幸せな気持ちだったのを覚えています。
それから16年がたち、今はいつでもコーヒーを飲めます。
今もコーヒーはよく飲みます。朝イチに、街中で、待ち合わせで、商談で。
缶コーヒーも良く飲みます。
ほぼ毎日何らかの形で飲んでいます。
日常に慣れてしまって「幸せ」を忘れそうになるから、カフェラテは今でもホットで飲みます。
ホットのコーヒーはいいですね。