第二次世界大戦中、ナチスの強制収容所に収容されたV・E・フランクルの「夜と霧」という本に出てくる言葉です。
これは精神科医であるフランクルさんが収容者たちの精神的な崩壊を防ぐために、ほかの収容者に向かって語った言葉です。
フランクルさんは、真っ暗な居住棟で飢えと疲労に苦しんでいる仲間に向かって、こう語りかけます。
「私たちが過去の充実した生活の中、豊かな経験のなかで実現し、心の宝物としていることは、何もだれも奪えないものだ。そして、わたしたちが経験したことだけでなく、私たちが苦しんだことも、すべてはいつでも現実のなかへと救いあげられている。
(中略)
ものごとを、私たちの状況の深刻さを直視して、なおかつ意気消沈することなく、私たちの戦いが楽観を許さないことは戦いの意味や尊さをいささかも貶めるものではないことをしっかりと意識して、勇気を持ち続けてほしい。
(中略)
最後に犠牲としての私たちについて語った。いずれにしても、そのことに意味はあるのだ、と。犠牲の本質は、政治的理念のための自己犠牲であれ、他社のための自己犠牲であれ、このむなしい世界では、一見何ももたらさないという前提のもとになされるところにある、と。
(中略)
わたしたちはひとり残らず、意味なく苦しみ、死ぬことは欲しない。この究極の意味をここ、この居住棟で、今、実際には見込みなどまるでない状況で、私たちが生きることにあたえるためにこそ、わたしはこうして言葉をしぼり出しているのだ」
今、新型コロナウイルスの影響で未来が見通せず、かつてなかったほど自制と協力が求められる時だからこそ、価値のある言葉だと思います。