私の大好きな作家、丸谷才一さんが亡くなられました。
「小説や批評、翻訳と幅広く活動した日本芸術院会員で作家の丸谷才一(まるや・さいいち、本名・根村才一=ねむら・さいいち)氏が13日午前7時25分、心不全のため東京都内の病院で死去した。87歳。葬儀・告別式は近親者で行う。後日、お別れの会を開く予定。
関係者によると、今月上旬に体調を崩し、入院していたという。
大正14年、山形県鶴岡市生まれ。東大英文科卒。国学院大学で教えるかたわら、ジョイスの「ユリシーズ」などの翻訳に携わった。小説も執筆するようになり、昭和35年に「エホバの顔を避けて」で作家デビュー。43年には、「年の残り」で芥川賞を受け作家としての地歩を固めた。
47年に、長編「たった一人の反乱」で谷崎潤一郎賞を受賞。その後も、小説、評論など多方面で活躍し、63年に川端康成文学賞を受けるなど数多くの文学賞に輝いた。
平成3年には、俳人の種田山頭火を描いた「横しぐれ」の英訳が英紙の外国文学の特別賞を受賞するなど、海外でも高く評価された。
10年、日本芸術院会員。23年、文化勲章を受章。」
旧来のじめじめした私小説から一線を画した、日本文学の新しい地平を切り開いた大作家にして大文学者、のようです。
でも私が大好きなのは丸谷才一さんの軽妙洒脱なエッセイです。
今は絶版でしょうか、「犬だつて散歩する」で丸谷さんに出会いました。このエッセイ本は今でも私のベスト3に入ります。シャーロックホームズの話、電信柱に関する研究、幕末史の謎など今でも覚えています。和田誠さんのイラストともバッチリあっており、博覧強記の丸谷ワールドはとどまるところを知りません。
丸谷さんは「文章読本」を著したように古き良き日本語を大切にし、すべて旧仮名遣いで文章を書いておられます。たとえば「尊敬してゐる人に出会つたやうな気になる。」とか「さう言うこともあり得るでせう。」みたいな感じで、最初はとっつきにくいです。でもすぐに慣れ、知的世界にぐいぐい引き込まれます。
最近またあの文章の感じが忘れられずに再び読んでいたところです。「思考のレッスン」「花火屋の大将」「日本史を読む」など、今読んでも本当に面白いですねえ。
日本の誇る偉大な頭脳が失われたのは非常に残念なことです。
安らかにお眠りください。合掌。