3年前の冬に入院していました。手術をして、3か月間病院にいました。
手術後には体のあちこちにチューブがついていました。絶食期間も合計ひと月ほどありました。
その3か月の間、社長がいなくても会社は変わらず回っていました。自分のちっぽけさを認識し、一生懸命働いてくれる社内のみなさんに感謝し、この人たちのために良い会社にしようと決意を新たにしたのはこのころです。
さて、その病院の一階にはスタバ(スターバックス)が入ってました。まだ刺激物が禁止されていてコーヒーを飲めない頃に、点滴台を腕につけて通ると、実にいい香りがします。
冬の寒さを忘れてくれる、湯気の立つような温かいにおいです。
まるでそれは生きている喜びの匂い。それは「希望」の香りでした。
いつかは飲めるようになりたい。飲めるようになったら毎日飲みたい。
その「香り」の前を通るのがいつしか日課になりました。
しばらくして回復してきて、飲めるようになった時に一番に飲んでみました。
まだ牛乳は駄目だったので「カフェラテ」でなく、豆乳入りの「ソイラテ」にしてもらいました。
実際飲んでみたらたいしたことはありません。普通のおいしいコーヒーでした。
それでも幸せな気持ちだったのを覚えています。
それから3年がたち、今はいつでも飲めます。
今もコーヒーはよく飲みます。街中で、待ち合わせで、商談で。
さすがに毎日ではありませんが。
日常に馴れてしまって幸せを忘れそうになるから、カフェラテは真夏でもときどきホットで飲みます。