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高石工業株式会社 伸縮自在ブログ 水素とゴムの話 水素とゴムの話(2)-ブリスタ破壊対策とはみ出し破壊対策-
2020年5月27日

水素とゴムの話(2)-ブリスタ破壊対策とはみ出し破壊対策-

私たちの会社では高圧水素用のOリングを開発しています。今では、日本の多くの水素ステーションで採用され、使用用途が広まりつつあります。

 

 

 

高圧水素環境下でゴムパッキンを使った場合によく課題になる現象が、

「ブリスタ破壊」と「はみ出し破壊」です。

 

 

 

 

今回はその対策の話をします。

 

 

 

 

 

○円柱試験片の水素曝露によるブリスタ破壊挙動

 

 

 

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これは試験用に配合した3種類のφ29×t12.5のゴム試験片を、

100MPa/30℃で65時間水素曝露したあとの側面の様子です。

 

 

 

 

上段は硫黄加硫EPDMの充填剤なしの配合の結果です(左⇒右に順番に見てください)。

減圧後1時間で気泡発生とともに試験片の破壊が発生しているのがわかります。

その後4時間⇒8時間⇒11時間と時間が経つにつれ、破壊が消えていくのが観察されます。

これは、ゴム試験片内部に侵入した水素が、数時間のうちに抜けていっているためと推察されます。

 

 

 

 

次に中段は硫黄加硫EPDMのカーボンブラック25phrの配合の結果です。

気泡の発生から破壊発生に至るまで数時間を要している様子がわかります。

ゴム試験片の中に侵入した水素が内部に残り、時間とともに中からじわじわと現れてきているためではないかと思われます。

 

 

 

 

最後に下段は硫黄加硫EPDMのシリカ(白色充填剤)の配合の結果です。

これは気泡・破壊とも発生しなかったことがわかります。

 

 

 

 

これらのことから「耐ブリスタ性向上にはシリカを配合したゴム材料が有効である」

ということがわかります。

 

 

 

 

Ref: 村上敬宜,松岡三郎,近藤良之,西村伸,

「水素脆化メカニズムと水素聞き強度設計の考え方」

第14章,養賢堂(東京),(2012)

 

 

 

 

 

 

○Oリングの水素曝露による膨潤挙動

 

 

 

17071102

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは高圧水素曝露直後のOリングの体積変化率の結果です。

 

 

【供試体】 

 ・材質:EPDM   

 ・硬度:75  

 ・曝露時間:18時間

 

 

【試験条件】

 ・圧力:70MPa

 ・温度:100℃

 

 

 

ゴム試験片の圧縮率・充填率を4種類パターンを変えて高圧水素に暴露しています。

補強材としてカーボンブラックとシリカを配合したゴム試験片を比較していますが、

いずれの圧縮率・充填率においてもシリカ配合に比べ、

カーボンブラック配合の方が体積変化を抑えられているのがわかります。

 

 

 

 

このことから、「はみ出し破壊の原因となる体積膨潤には、カーボンブラックを配合

したゴム材料が有効である」ということがわかります。

 

 

 

 

Ref: S Nishimura et al., International Symposium of HYDROGENIUS,

2011.2.2, Fukuoka, Japan

 

 

 

 

 

○「ブリスタ破壊」対策と「はみ出し破壊」対策

 

 

 

「ブリスタ破壊」対策にはシリカ配合、「はみ出し破壊」対策には

カーボンブラック配合が有効ということから、私たちはこれら両方を

併用することが望ましい、と想定し配合に反映させています。

 

 

 

 

次回は水素ステーションの話をします。

 

 

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