私たちの会社では高圧水素用のOリングを開発しています。今では、多くの水素ステーションで採用され、使用用途が広まりつつあります。
2007年からその研究が始まっているのですが、そのいきさつを書いた記事が見つかりました。私たちが今見ても面白い内容になっていますので(内容が古いところは若干今風にアレンジしています)、再掲します。
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前回まで、問合せ(№1)と見積依頼(№2)、試験片作成(№3)のお話をしました。
今回は試験結果のお話をします。
解説して下さいました
初回納品から数ヶ月後、西村先生のご厚意で来社して試験結果の解説をして下さいました。試験片をお願いするからには内容を話して理解してもらった上で作ってもらった方がいい、という西村先生のお考えからでした。
これは私たちとしても大変ありがたいことでした。
「いったいなんに使われるのか」「納品した試験片はどうなったのか」などやはり気にかかるものです。
また内容をお話しいただくことでゴム屋なりのご提案もできるかもしれません。
そういった意味でも詳細を教えていただくことはお互いにプラスであると考えています。
試験結果
さて、解説して下さった試験結果です。
写真に載っているのがブリスタ現象です。
試験片はφ29×t12.6の円筒ブロックで、材料はEPDMのカーボンブラックが入っている配合と入っていない配合です。
そして上段が圧力10MPaの水素ガス中に曝露した後の状態、下段が圧力100MPaの水素ガス中に曝露した後の状態です。
試験片は、高圧水素に曝露されると内部に水素の侵入を受けます。
そのあと急速に大気圧まで減圧すると、写真に示したようにブリスタと呼ばれるゴムの破壊現象が起きます。
「10MPa水素ガス中で曝露したエチレンプロピレンゴムの水素侵入特性とブリスタ破壊に及ぼす充てん剤の影響」
山辺 純一郎、中尾 匡利、藤原 広匡、西村 伸
日本機械学会論文集 2008年7月号(第74巻第743号)A編 (材料力学、材料など) 971ページ
ブリスタ現象
これを見るまでブリスタ現象というものを知りませんでした。
それにゴムがこんな状態になるのも初めて見ました。
私たちが普段目にするのは、油に膨れたり水でぼろぼろになったもので、ここまで破壊された状態は衝撃的でした。
また、カーボンブラックが入っているEPDMと入っていないEPDMで破壊のされ方が違うのにもびっくりしました。
解説を受けて
解説をしていただいた感想は、ただただびっくりするばかりでした。
自分たちが納めた試験片がこういったことに使われていることへの驚きと、最先端の話への驚きとで、ただうなずくばかりでした。
と同時に見たことも聞いたこともない話に、ずいぶん引き込まれました。
次の案件
九州大学水素利用技術研究センター様の水素曝露用試験片は、その後も続き今も(’09.4当時)お付き合いさせていただいております。
次々に持ち込まれる「こんなことできませんか」という相談をいつも楽しみにしています。
これまでに数十種類の材料、十数種類の形状、実に様々なものを作りました。
残念ながらまだ公開されていないのでお話しすることはできませんが、いずれまたまとめてお話したいと思います。
計4回にわたってお話ししました水素曝露試験片ゴム試験片はこれでひとまず終わりです。
その後、実際の水素ステーション向けのゴム材料を開発することになるのですが、それはまた改めてお話したいと思います。
最後までご覧いただいて、ありがとうございました。