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2009年6月22日

EPDMの耐塩素効果について №1

キーワード:耐候性,耐オゾン性,耐薬品性,二重結合,過酸化物架橋
      次亜塩素酸ナトリウム,残留塩素,カーボン離脱,墨汁現象

技術部の高橋です。

1.はじめに

弊社ではEPDM,NBR,FKM,VMQなどのシール材に用いられる代表的なゴムを
取り扱っています。それぞれのゴム材料の一般的な性能を表1に示す。 

zaoryou2.JPG 
これらのゴムのうちEPDMは主鎖に二重結合がないことに起因して、耐オゾン性耐候性
酸,アルカリなどに対する耐薬品性が優れるという特徴があります。
特に過酸化物で架橋させたものは耐久性や耐熱性が良好であるため、水や熱水が流れる水回り
のシール材として使われることが多いのです。

一方、近年では上水道において、殺菌用として用いられる次亜塩素酸ナトリウムの濃度が高まる
傾向にあり、それに伴いシール材からのカーボン離脱墨汁現象など、水道水中への異物混入の
原因となるシール材の劣化現象に悩まされています。
そこで、今回は弊社のEPDMが水回りのシール材として使われたとき、塩素によって受ける
影響を試験した結果を報告します。

 

 

2.低濃度残留塩素による劣化メカニズム

低濃度残留塩素とは、水道水を次亜塩素酸ナトリウムで殺菌したときに残留する塩素で、
普通の水道水であればだいたい1ppmぐらいであることが知られています。
この低濃度残留塩素によってEPDMシール材は下記のような流れで劣化します。

① 水道水中の次亜塩素酸ナトリウムがEPDMに配合されたカーボンブラックに少しずつ吸着
② ポリマーの主鎖切断による架橋密度の低下
③ シール材の部分的な分解・崩壊
カーボン離脱墨汁現象など微少破片の流出

* ppm=parts per million⇒百万分の1
例えば、1000ppm=1000/1000000=1/1000=0.1%
ですから1ppm=1/1000000=0.0001% となります。

 

3.試験方法
60℃に保持した次亜塩素酸ナトリウム50ppm水溶液に試料を浸漬し、sikennsouti.JPG
800時間経過後の試料表面からのカーボン離脱の有無を確認する。
また、浸漬前と浸漬後の質量,体積及び引張り強さなど
の機械的性質の変化も測定する。
さらに、同じ硬さの材料でカーボンブラック配合品と
シリカ配合品で耐塩素水性に違いがあるのかも確認する。

試験液:次亜塩素酸ナトリウム水溶液(50ppm)
浸漬温度及び時間:60℃×800時間
用意した試料:硬さ60,70,80,90の
       カーボンブラック配合品
       硬さ60,70のシリカ配合品siryou.JPG

*試料はいずれも弊社の代表的なEPDM材料を選定。

次回は試験結果等の報告です。
ではまた。

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