大阪府 A社様
摺動性材料の開発支援
お問い合わせ内容
弊社のホームページをご覧いただいてお問い合わせをいただきました。 内容は、現在A社様が開発されている「あるフィラー」を合成ゴムに配合することで、成形後の製品表面の摺動抵抗を小さくできるかどうか、また常態値や圧縮永久ひずみにどのような影響を与えるかを調べてほしいというものでした。
試験実施までの打ち合わせ
試験の実施までに二度の打ち合わせを行いました。 一度目は弊社の設備や工場全体の雰囲気をご覧いただいたり、配合するフィラーを拝見させていただくための打ち合わせです。 二度目は具体的な配合内容と試験の方法を詰めるための打ち合わせでした。さらに二回の打ち合わせの間の期間も必要に応じてメールやお電話にてやり取りをさせていただきました。 どんな場合もそうですが、始める前の打ち合わせを十分に行っておくことで、開始後もスムーズにすすめることができますので、お客様にご安心いただくためにも弊社ではこの事前打ち合わせをじっくりと行うようにしています。
配合内容の決定
今回のご依頼においては、まずベースとなるNBRの配合はJISのハンドブックに掲載されているような一般的な内容にするほうが、説明を聞かれたお客様も理解しやすいのではと弊社からご提案し、それにてすすめました。 そして上記の通り二度目の打ち合わせの際に、上記のベース材料にフィラーの量を3種類変えて配合したものと、比較用にフィラーを配合しないものとの合計4材料にて試験を行うことを決めました。具体的には次の通りです。
|
配合A |
配合B |
配合C |
配合D |
NBR |
100.0 |
100.0 |
100.0 |
100.0 |
亜鉛華 |
3.0 |
3.0 |
3.0 |
3.0 |
硫黄 |
1.5 |
1.5 |
1.5 |
1.5 |
ステアリン酸 |
1.0 |
1.0 |
1.0 |
1.0 |
カーボンブラック |
40.0 |
40.0 |
40.0 |
40.0 |
加硫促進剤 |
0.7 |
0.7 |
0.7 |
0.7 |
フィラー |
0.0 |
10.0 |
20.0 |
30.0 |
合計 |
146.2 |
156.2 |
166.2 |
176.2 |
お見積書の提出
お見積書は二度目の打ち合わせを行う前にメールでご提出しました。 これは一度目と二度目の電話やメールでのやり取りでおおよそのことが決められたためです。 今回のご依頼は、配合薬品や材料の準備、試験片の製作、そして各試験の実施、がおもな内容でしたので、工程ごとに内訳を明示してお見積書を作成しました。
試験のすすめ方
試験に使用した引張試験機
その他、常態値(硬さ、伸び、引張強さ)と圧縮永久ひずみについては平時から弊社で行っているように各種試験片を作成のうえ、数値を測定しました。 今回のご依頼ではお客様のご発注から常態値のご報告までが2週間、摺動試験の結果報告までが3.5週間でした。 ※必要な期間は、ご依頼内容、各試験の内容、機器類の使用状況等により異なります。
試験結果のご報告
通常、弊社では試験結果をレポートにまとめてご報告していますので、今回も一連の内容をとりまとめてご報告しました。 また必要に応じてデータの提出も請け負っております。
お客様の声
今回の試作・試験を検討するにあたり、高石工業様より頂いた試験の条件やゴム配合のアドバイスは非常に参考になりました。 また、試験の経過報告や試験終了後のフォロー等、非常にきめ細やかなご対応をして頂きました。
九州大学水素材料先端科学研究センター 様
水素曝露試験用ゴム試験片の作成
ゴム試験片
ダンベル1号(引っ張り試験用) 円柱ブロックφ29×12.6(水素曝露試験用) 他
ゴム材料
NBR カーボンブラック入り NBR カーボンブラックなし EPDM カーボンブラック入り EPDM カーボンブラックなし 他
事例
燃料電池システムに使用される高圧水素シール用のゴムパッキンを作るための研究をされている中で、水素試験用に試験片を作成したいというご依頼でした。 配合の内容は、「配合指定で、NBR・EPDMそれぞれカーボンブラックの入っているものと入っていないもの」というもので、まさにゴム屋の常識を覆すお話でした。 わたしたちはゴムに充填剤を入れずに材料を作ったことがなかったので、驚いたものです。 実際材料を作り成形してみると多少癖があるものの、試験片を作成するには問題ありませんでした。 その後も多種多様な配合で試験片作成をご依頼いただき、大変貴重な経験をさせていただきました。
試験結果
写真は圧力10MPaおよび100 MPaの水素ガス中で曝露した円筒ブロック試験片の水素曝露後の状態です。
高圧水素に曝露され、ゴムの内部に水素が侵入した後、急速に大気圧まで減圧することにより、写真に示した試験片のようにブリスタと呼ばれるゴムの破壊現象が起こります。
充填剤としてカーボンブラックが入っているゴム材料と入っていないものについて、ブリスタ現象とゴム試験片中の水素侵入量の関係を調べた結果、ブリスタ現象に及ぼす充填剤の影響がわかりました。
参考文献
「10MPa水素ガス中で曝露したエチレンプロピレンゴムの水素侵入特性とブリスタ破壊に及ぼす充てん剤の影響」 山辺 純一郎、中尾 匡利、藤原 広匡、西村 伸 日本機械学会論文集 2008年7月号(第74巻第743号)A編 (材料力学、材料など) 971ページ
お客様の声
教授 西村 伸 様
研究目的であり、通常のゴム製品とは異なる視点で研究者が考えたゴム配合による少量の試験片作製という内容でしたが、高石工業さんではこちらの意図を理解した上で、面白がって取り組んでくれました。 配合を小刻みに変えて何パターンも材料を練ってもらうことや多様な試験片作成に対応していただき、研究をスムーズに進めることができました。