伸縮自在ブログ伸縮自在ブログ
高石工業株式会社 伸縮自在ブログ 水素暴露試験用ゴム試験片の作成 水素曝露試験用ゴム試験片の作成  №4 試験結果
2009年5月18日

水素曝露試験用ゴム試験片の作成  №4 試験結果

お客様 : 九州大学水素利用技術研究センター 様

キーワード : ブリスタ 水素曝露 ゴムの開発支援 ゴムの提案型営業

営業部の齋藤です。

前回まで、問合せ(№1)と見積依頼(№2)と試験片作成(№3)のお話をしました。
今回は試験結果のお話をします。

 

解説して下さいました

初回納品から数ヶ月後、西村先生のご厚意で来社して試験結果の解説をして下さいました。
試験片をお願いするからには内容を話して理解してもらった上で作ってもらった方がいい、という西村先生のお考えからでした。
これは私たちとしましても大変ありがたいことでした。
「いったいなんに使われるのか」「納品した試験片はどうなったのか」などやはり気にかかるものです。
また内容をお話しいただくことでゴム屋なりのご提案もできるかもしれません。
そういった意味でも詳細を教えていただくことはお互いにプラスであると考えています。

 

おもしろい案件

「おもしろい案件」について以前お話をしました。
形状や材料もさることながら、それがいったい何に使われるのかというエッセンスも含まれます。
私たちはゴム屋ですので、それ以外のことは一般知識程度にしかわかりません。
お問い合わせいただくお客様は様々で、知らない分野がたくさんあります。
じつはそういったお話を聞かせていただくことも「おもしろい案件」と感じる一因になります。
社長の言う「おもしろいねー」「わくわくするねー」というコメントも、「こんな用途で使うらしいですよ」と報告するところから生まれます。
特筆すべきはそういった案件を「これは無理だろう」ではなく「こりゃおもろそうだな」と入っていける社風にあると思います。

 

試験結果

さて、解説して下さった試験結果です。
写真に載っているのがブリスタ現象です。
試験片はφ29×t12.6の円筒ブロックで、材料はEPDMのカーボンブラックが入っている配合と入っていない配合です。
そして上段が圧力10MPaの水素ガス中に曝露した後の状態、下段が圧力100MPaの水素ガス中に曝露した後の状態です。
試験片は、高圧水素に曝露されると内部に水素の侵入を受けます。
そのあと急速に大気圧まで減圧すると、写真に示したようにブリスタと呼ばれるゴムの破壊現象が起きます。

bakuro.JPG   

ブリスタ現象

これを見るまでブリスタ現象というものを知りませんでした。
それにゴムがこんな状態になるのも初めて見ました。
私たちが普段目にするのは、油に膨れたり水でぼろぼろになったもので、ここまで破壊された状態は衝撃的でした。
また、カーボンブラックが入っているEPDMと入っていないEPDMで破壊のされ方が違うのにもびっくりしました。

ゴム屋としてはただただびっくりするだけですので、詳細は論文にまかせます。
以下の参考文献を参照してください↓

「10MPa水素ガス中で曝露したエチレンプロピレンゴムの水素侵入特性とブリスタ破壊に及ぼす充てん剤の影響」
山辺 純一郎、中尾 匡利、藤原 広匡、西村 伸
日本機械学会論文集 2008年7月号(第74巻第743号)A編 (材料力学、材料など) 971ページ

 

解説を受けて

さて、解説をしていただいた感想は、ただただびっくりするばかりでした。
自分たちが納めた試験片がこういったことに使われていることへの驚きと、最先端の話への驚きとで、ただうなずくばかりでした。
と同時に見たことも聞いたこともない話に、ずいぶん引き込まれました。
そういった意味でもゴムの開発支援ということが私たちにはしっくりきます。

 

ゴムの開発支援

お問い合わせいただくお客様の内容は、私たちの知らない分野がほとんどです。
これから開発しようというお話ですので、分からないことがほとんどといっていいくらいです。
ですのでじっくりゆっくり話を聞きます。
分からない単語も出てくるのでその都度聞いて解説してもらいます。
そういった中でお客様の「つくりたい」を聞き出していきます。

 

ゴムの提案型営業

私たちの仕事はそのお客様の「つくりたい」を「カタチ」にすることです。
お客様がその分野の専門家なら私たちはゴムの専門家です。
私たちは聞き取りを元に、現実的で実現可能な方法を考えます。
そして、可能な選択肢を提案します。
これが私たちの提案型営業です。

 

実は勉強させてもらっている

かっこいいことを言っていますが、実は勉強させてもらっているんですね。
こういうことを通じて見聞を広め、新しい分野を知り、知識を高めています。
「おもしろい案件」で楽しい仕事をして勉強させてもらっています。
ありがたいことです。

 

次の案件

九州大学水素利用技術研究センター様の水素曝露用試験片は、その後も続き今も(’09.4)お付き合いさせていただいております。
次々に持ち込まれる「こんなことできませんか」という相談をいつも楽しみにしています。
これまでに数十種類の材料、十数種類の形状、実に様々なものを作りました。
残念ながらまだ公開されていないのでお話しすることはできませんが、いずれまたまとめてお話したいと思います。

計4回にわたってお話ししました水素曝露試験片ゴム試験片はこれでひとまず終わりです。

次回もお楽しみに。

 

研究開発支援のページへ

ページの先頭へ