高石工業株式会社伸縮自在 高石工業研究開発型ブログ
  • 2020年05月25日

    水素とゴムの話(1)-ブリスタ破壊とはみ出し破壊-

    私たちの会社では高圧水素用のOリングを開発しています。今では、多くの水素ステーションで採用され、使用用途が広まりつつあります。

     

     

    高圧水素環境下でゴムパッキンを使った場合によく言われるのが、

    「ブリスタ破壊」と「はみ出し破壊」です。

     

     

     

     

    ○ブリスタ破壊 

    01水素入り込む図

     

     

     

     

      

     

     

    高圧水素ガスに曝されたゴムパッキンには、

    どんどん水素が貯めこまれていきます。

     

      02き裂発生する図

     

     

     

     

     

     

     

    その後脱圧すると水素は外部に出ようとします。
    その時内部に気泡が発生し、き裂になることがあります。

    き裂が進展するとゴムパッキンの破壊に至ります。
    これがブリスタ破壊現象です。

     

     

     

     

     

    Exif_JPEG_PICTURE 04ブリスタ拡大図 

     

     

     

     

     

     

     

    上の写真は試験用の配合で水素曝露したEPDMのOリングです。
    拡大写真をご覧いただくと、表面が内側から裂けている様子がわかるかと思います。

     

     

     

     

     

    05ブリスタ断面図

     

     

     

     

     

      

     

     

    この写真は別の試験片の断面です。
    表面まで亀裂が達しておらず、内部のみ裂けている部分があるのがわかるかと思います(赤丸部)。

     

     

     

    このように、外見だけではブリスタ破壊が起きているかどうか判別できないときがあります。
    よって、Oリングは外見だけでなく断面の観察も行い、ブリスタ破壊が起きていないか確認をします。

     

     

     

     

     

    ○はみ出し破壊

     

     

     

    06はみ出し前図

     

     

      

      

     

    これはOリングのシール構造の断面図です。

     

    高圧水素ガスに曝されたOリングには、どんどん水素が貯めこまれていきます。

      

      

     

     

     07はみ出し破壊図

     

      

       

      

     

     

     

      

    その後Oリングは水素により膨潤していきます。

    水素の侵入により体積は膨張し、溝からはみ出すことになります。

    はみ出たOリングはいずれ破壊に至ります。これが「はみ出し破壊現象」です。

     

     

     

     

     Exif_JPEG_PICTURE 09はみ出し破壊拡大図

     

     

     

         

     

     

     

     

    写真は試験用の配合で水素曝露したEPDMのOリングです。
    拡大写真のOリングのパーティングラインの上あたりが
    ひげのようにはみ出ているのがわかると思います。

     

     

    私たちが実施している試験は90MPaで行うことが多く、
    水素の浸入に圧力の加減圧による負荷も加味されて複合的に破壊されることが
    一般的です。

     

     

     

    高圧水素でゴムパッキンを使用する場合、
    これらの破壊を極力抑えることが課題となります。

     

     

     

     

     

    次回はこの課題へのアプローチの話をします。

     

     

     

     

    Ref: 村上敬宜,松岡三郎,近藤良之,西村伸,

    「水素脆化メカニズムと水素聞き強度設計の考え方」第14章,養賢堂(東京),(2012)

    カテゴリー:水素とゴムの話
  • 2020年05月20日

    水素曝露試験用ゴム試験片の作成 №4 試験結果 (再掲)

    私たちの会社では高圧水素用のOリングを開発しています。今では、多くの水素ステーションで採用され、使用用途が広まりつつあります。

     

    2007年からその研究が始まっているのですが、そのいきさつを書いた記事が見つかりました。私たちが今見ても面白い内容になっていますので(内容が古いところは若干今風にアレンジしています)、再掲します。

     

     

     

    —————(ここから)—————

     

     

     

     

    前回まで、問合せ(№1)と見積依頼(№2)、試験片作成(№3)のお話をしました。
    今回は試験結果のお話をします。

     

     

     

     

    解説して下さいました

     

     

    初回納品から数ヶ月後、西村先生のご厚意で来社して試験結果の解説をして下さいました。試験片をお願いするからには内容を話して理解してもらった上で作ってもらった方がいい、という西村先生のお考えからでした。

     

    これは私たちとしても大変ありがたいことでした。

     

    「いったいなんに使われるのか」「納品した試験片はどうなったのか」などやはり気にかかるものです。

     

    また内容をお話しいただくことでゴム屋なりのご提案もできるかもしれません。

     

     

    そういった意味でも詳細を教えていただくことはお互いにプラスであると考えています。

     

     

     

    試験結果

     

     

    さて、解説して下さった試験結果です。

     

    写真に載っているのがブリスタ現象です。

     

    試験片はφ29×t12.6の円筒ブロックで、材料はEPDMのカーボンブラックが入っている配合と入っていない配合です。

     

    そして上段が圧力10MPaの水素ガス中に曝露した後の状態、下段が圧力100MPaの水素ガス中に曝露した後の状態です。

     

    試験片は、高圧水素に曝露されると内部に水素の侵入を受けます。

     

    そのあと急速に大気圧まで減圧すると、写真に示したようにブリスタと呼ばれるゴムの破壊現象が起きます。

     

     

     

     

    bakuro.JPG   

    「10MPa水素ガス中で曝露したエチレンプロピレンゴムの水素侵入特性とブリスタ破壊に及ぼす充てん剤の影響」
    山辺 純一郎、中尾 匡利、藤原 広匡、西村 伸
    日本機械学会論文集 2008年7月号(第74巻第743号)A編 (材料力学、材料など) 971ページ

     

     

     

     

    ブリスタ現象

     

     

    これを見るまでブリスタ現象というものを知りませんでした。

     

    それにゴムがこんな状態になるのも初めて見ました。

     

    私たちが普段目にするのは、油に膨れたり水でぼろぼろになったもので、ここまで破壊された状態は衝撃的でした。

     

    また、カーボンブラックが入っているEPDMと入っていないEPDMで破壊のされ方が違うのにもびっくりしました。

     

     

     

     

    解説を受けて

     

     

    解説をしていただいた感想は、ただただびっくりするばかりでした。

     

    自分たちが納めた試験片がこういったことに使われていることへの驚きと、最先端の話への驚きとで、ただうなずくばかりでした。

     

    と同時に見たことも聞いたこともない話に、ずいぶん引き込まれました。

     

     

     

     

    次の案件

     

     

    九州大学水素利用技術研究センター様の水素曝露用試験片は、その後も続き今も(’09.4当時)お付き合いさせていただいております。

    次々に持ち込まれる「こんなことできませんか」という相談をいつも楽しみにしています。

     

     

    これまでに数十種類の材料、十数種類の形状、実に様々なものを作りました。
    残念ながらまだ公開されていないのでお話しすることはできませんが、いずれまたまとめてお話したいと思います。

     

     

     

     

    計4回にわたってお話ししました水素曝露試験片ゴム試験片はこれでひとまず終わりです。

     

     

    その後、実際の水素ステーション向けのゴム材料を開発することになるのですが、それはまた改めてお話したいと思います。

     

     

     

    最後までご覧いただいて、ありがとうございました。

     

    カテゴリー:水素とゴムの話
  • 2020年05月18日

    水素暴露試験用ゴム試験片の作成 №3 試験片製作(再掲)

    私たちの会社では高圧水素用のOリングを開発しています。今では、多くの水素ステーションで採用され、使用用途が広まりつつあります。

     

    2007年からその研究が始まっているのですが、その当時のいきさつを書いた記事が見つかりました。私たちが今見ても面白い内容になっていますので(内容が古いところは若干アレンジしています)、再掲します。

     

     

     

    —————(ここから)—————

     

     

    正式注文がきた

     

     

     

    御見積書を提出して3週間後、正式注文が来ました。

    私たちとしましても注文書をいただかないと動けないので、心の準備はしつつ、今か今かと待っていました。

    私は営業なので、注文書を受け取ると「仕事をもらった!」と実感し、嬉しくなります。

    今回は試験片のボリュームとしては多いので、喜びはひとしおでした。

     

     

     

     

     

    技術部に材料の依頼

     

     

    今回の場合、まず材料の手配を技術部に依頼しました。

     

    材料の配合は西村先生からの指定なので、配合表をそのまま技術部に送りました。

    全部で4種類なのでそれぞれに番号を振り、区別をしました。

     

     

     

     

    製造部に製作の依頼

     

     

    試験片は4種類なので、それぞれに製作依頼を出しました。

    ① 平角150㎜×150㎜×2㎜
    自社の金型があるのでそのまま製作依頼を出しました。

     

    ② ダンベル1号
    2㎜のシートから抜くので①と同じ依頼+ダンベル1号で抜く依頼を出しました。

     

    ③ 短冊2㎜×1㎜×60
    1㎜のシートからカットするので平角150㎜×150㎜×1㎜の製作依頼
    +2㎜×60㎜の加工依頼(こちらは外部に委託)を出しました。

     

    ④ φ29×t12.6
    厚さ20㎜くらいの方形もしくは円形ということでしたので、社内でいつも圧縮永久歪試験に使用するブロック(φ29×t12.6)を流用する取り決めになっていました。
    これも金型があるのでそのまま製作依頼を出しました。

     

     

     

    (左下図はダンベルを抜いている様子。右下図は出来上がった短冊です。) 

     

    dannberu.JPG

     

     

     

     

     いざ製造工程へ 

     

     

    下の写真の順番で製造は行われました(写真は当時のものです)。

     

    koutei 2.JPG

     

     

     

    一安心

     

     

    納品が終わると一安心します。
    今回は初めてのことでもあるので納期は長い目にもらっていました。
    ですので余裕をもって納品することができました。

     

     

     

    勝手が違う

     

     

    とはいうものの、試験片を納めるということは通常の量産品の工程こそ同じでも内容は全く違うものでした。

     

    特に勝手が違ったのは成形工程・検査工程でした。

     

     

    今回の成形品の形状はすべて技術部が物性試験に使用するものばかりでした。

    日頃は技術部で成形し物性試験をするので、製造部には流れてこない形状です。つまり、製造部の工程でそのような形状が流れてくることが初めてだったわけです。

     

    しかも「部品」としてではなく試験をするための「テストピース」なので、完成品のタイプが全く変わってきます。

     

     

     

     

    サンプルを送って確認してもらいました

     

     

    引張試験に用いるダンベルや、短冊についてはシートからの加工であり、JIS規格もあるので、問題はありませんでした。

     

    ところが平角や円柱ブロックについてはどのように使うのか、把握していませんでした。

     

    配合によっては成形工程での材料の伸びが悪く、成形してもどうしても端が欠けたりしました。

     

    そこでサンプルを送って「こんな感じになるんですけど…」とおそるおそる確認を取りました。

    聞いてみると、試験片への加工前の段階の素材としての成形品で、そのままシールするわけではないので、ものによっては多少にカケは構わないし寸法公差もありません、ということでした。

     

    通常量産品の基準で見てみると(形状はシールできるものではありませんが)とても合格にできるようなものではないので、初めのころは戸惑いましたし、現場の検査担当の人は心配そうな顔をしていました。

     

    配合が特殊であることや、最終的な仕上げはお客様(九州大学)で実施すること、比較という観点から成形条件を揃える必要があること、などの理由で試験に影響のない程度で認めていただきました。

     

     

     

     

    その後試験結果は論文で発表されました。

     

    西村先生はわざわざこちらに足を運んで来られて、解説もしていただきました。

     

     

     

     

    そこではじめて「ブリスタ破壊」の試験片を目にしてびっくりすることになります。

     

    そのあたりは次回に。

     

     

     

    (№4に続きます)

     

    カテゴリー:水素とゴムの話
  • 2020年05月14日

    水素暴露試験用ゴム試験片の作成 №2 見積依頼 (再掲)

    私たちの会社では高圧水素用のOリングを開発しています。今では、多くの水素ステーションで採用され、使用用途が広まりつつあります。

     

    2007年からその研究が始まっているのですが、その当時のいきさつを書いた記事が見つかりました。私たちが今見ても面白い内容になっていますので(内容が古いところは若干アレンジしています)、再掲します。

     

     

     

    —————(ここから)—————

     

    営業部の斉藤です。

     

    前回は西村先生からのファーストコンタクトの話をしました。
    今回は見積依頼の話をします。

     

     

     

    久しぶりに連絡が来た

     

     

    前回電話を切ってからというもの、「いつになったら連絡がくるかな?」とどきどきしながら待っていましたが、一週間後メールで見積依頼が来ました。

     

     

     

     

    内容は、

    sikennhenn 2.JPGのサムネール画像

     

     

    材料が4種類

    ① NBR(カーボンブラックなし)

    ② NBR(カーボンブラックあり)

    ③ EPDM(カーボンブラックなし)

    ④ EPDM(カーボンブラックあり)

     

     

     

    これら4種類の材料それぞれに試験片を4種類

    ① 平角150㎜×150㎜×2㎜
    ② ダンベル1号
    ③ 短冊2㎜×1㎜×60㎜
    ④ 厚さ20㎜程度の方形もしくは円形

    というものでした。

     

     

     

     

    配合について

     

     

    IMG_8479.JPG

     

    気になるゴム材料の配合内容については、「命」と言ってもいいくらいゴムメーカーの私たちには非常にデリケートな問題です。

     

    私たちはゴム材料の性能を命とするゴム屋ですから、普段量産で使っているゴム材料の配合内容自体を教えるわけにはいきません。

     

    ゴム屋に配合を聞くということは、鰻屋に秘伝のタレを聞くようなもので、「それはノウハウなのでご容赦ください」といわれるのがオチなのです。

     

     

     

    前回のファーストコンタクトの時にある程度このあたりの下打ち合わせはしてありました。

     

    西村先生はその点をよく理解されておられて、「当然公開できないでしょうし、独自の配合を聞くつもりもありません」と配慮していただいたことを覚えています。

     

     

     

     

     

    西村先生からの提案は、ゴムの本に載っているような基本的な配合でいいというものでした。

     

     

     

    それでもこういう依頼に不慣れな私たちは、配合をすべて指定してほしいというお願いをしました。なぜなら私たちが使っているポリマーの種類、カーボンの種類、使う薬品、などすべてがノウハウの固まりだからです。

     

     

     

    結局西村先生の方よりご希望の配合をお伺いして、それに私たちから対応できるものは流用し、できないものは購入する、という形をとりました。

     

     

     

     

    いい関係

     

     

    この案件は大学の研究なので、論文として公開される、ということが前提でした。

    先ほども書いたようにゴム業界には閉鎖的な慣習があり、「ゴムの配合内容はマル秘」というのが一般的です。

    したがって、閉鎖的といわれるゴム業界においてどこまでオープンにしてよいものやら戸惑いました。

     

     

    西村先生はそのあたりを十分考慮されていて、どうしたら私たちが対応しやすいか最初から気遣ってくださいました。この点はとてもありがたかったです。

    ですから私たちもどういう方法が一番いいのか考えることができましたし、気軽にご提案もできました。

     

     

    売り手である私の方から申し上げるのもなんですが、いい関係ができつつあるなと思いました。

     

    問い合わせの対応をしていると日々新しいお客様とお話をしますが、いい仕事というのは内容ではなく、人と人との関係だとつくづく感じます。

     

     

     

     

     

    調整は大変でした

     

     

    このようにトントン拍子で進んだかの如く話していますが、実際の調整は一筋縄ではいかず大変でした。

     

    薬品の種類、カーボンの種類、試験片の形状・・・など。

     

     

    当時の記録を見ると電話とメールが入り乱れていました。

     

    まあ私がこういうことに慣れていなかったのが一番の原因かもしれませんが・・・。

     

    幸い、西村先生がこちらのやりやすいようにしてくださいとおっしゃってくださったので、すんなりと配合を決めることができました。

     

     

     

     

    詳細を聞く

     

    お恥ずかしい話ですが、最初の電話の時にこの試験片の目的を聞いていませんでした。

    応対するのが精いっぱいでそんな余裕もなかったんだと思います。

    御見積りを出すにあたって、「で、なんに使うんですか?」と聞いたくらいです。

     

     

    今では使用環境や目的を尋ねるようにしています。

    もちろん機密事項もあるでしょうからできる範囲でいいのですが、教えていただいた方が私たちからのご提案もできますし、仕事はやりやすくなります。

    実はそこに私たちの特徴があります。

     

     

     

    さて詳細はというと、この試験片を高圧の水素中に入れてどう変化するか見るのだそうです。

    それがいったいどういうものか想像もつかなかったので、その時は「あー、そーですか」と返事するくらいしかできませんでした。

     

     

    結果はゴムが見たこともないような変化を起こすのですが、それは別の回にお話しします。

     

     

    とりあえずは予定通り、御見積りを提出しました。

    3週間後に注文がきて試験片製作に取り掛かることになります。

     

     

     

    そのあたりはまた次回に。

     

     

     

     

    提案型営業

     

    IMG_8903.JPGのサムネール画像

     

    この一連のやり取りから学んだことは、いっしょに考え最適な方法を提案するというスタイル、つまり提案型営業です。

     

    多くのお客様は「ゴムのことはよくわからない」とおっしゃいます。

     

    西村先生も自分の研究室でゴムの設備一式を揃えてやってみようと検討されたということでした。ですがその道のりを考えると、「ゴムの研究」より「ゴムを作る研究」から始めないといけないので断念したそうです。

     

    ゴムの専門家である私たちならではのご提案、お役立ちの方法があるのだなと感じた次第です。

     

     

     

     

    ではまた。

     

    (№3に続きます)

     

     

    カテゴリー:水素とゴムの話
  • 2020年05月12日

    水素暴露試験用ゴム試験片の作成 №1 問合せ (再掲)

    私たちの会社では高圧水素用のOリングを開発しています。今では、多くの水素ステーションで採用され、使用用途が広まりつつあります。

     

    2007年からその研究が始まっているのですが、その当時のいきさつを書いた記事が見つかりました。私たちが今見ても面白い内容になっていますので、(内容が古いところは若干アレンジしています)再掲します。

     

     

     

     

     

    —————(ここから)—————

     

    営業部の斉藤です。

     

     

    九州大学の水素利用技術研究センター(HYDROGENIUS)ではその名の通り、水素に関する研究をされています。

     

    その中でも高分子材料部門の西村先生の研究室は「高圧水素機器に使用するシールやOリングに適したゴム材料はなにか」というところに焦点を当て、高圧水素がゴムに与える影響を研究されています。

     

    私たちはその研究に使われるゴム試験片(テストピース)を作成し、納めています。

     

     

     

     

    sikennhenn 2.JPG

     

     

     

    私たちがどういう対応をしてご要望にお応えしてきたのか、これまでのいきさつをお話していきたいと思います。

     

     

     

     

     

     

    電話がかかってきた

     

     

    CIMG1714.JPGのサムネール画像

    (写真は2009年当時のもの)

     

     

     

    ある昼下がり、いつものように事務所で仕事をしていると水素利用技術研究センター様からの問合せの電話がかかってきました。

    内容は「カーボンを入れないゴムは作れないか?」というものでした。

     

     

    初めてのお電話にもかかわらず、ずいぶん長く(30分くらい?)お話をさせていただいたと記憶しているのですが、ポイントは次のようなことでした。

     

    ① カーボンを入れた材料と入れない材料を作ってほしい

    ② ベースはNBRとEPDM

    ③ 必要なゴム試験片(テストピース)はシート数十枚

     

     

    ゴムには基本的に補強材としてカーボンを入れますので、パッキンを作っている私たちとしては「カーボンを入れない」材料は作ったことがありませんでした(作ったところでパッキンの材料として使えないので、作る必要もないのです)。

     

     

    まずは社内で技術部に相談と考え、いったん電話を切りました。

     

     

     

     

    作れないことはない

     

     

    社内で技術部に「カーボンを入れない材料」は果たして可能なのか尋ねたところ、「作れないことはない」という回答でした。

     

    この「作れないことはない」というのは作ろうと思えば作れる、ということなのでここは一安心なのですが、次に続くのは「そんなもの作ってどうするのだろう?」という当然と言えば当然の疑問でした。

     

     

     

     

     

    「ゴムの試作やります!」

     

     

     

     

    top.JPGのサムネール画像

     

     

    この問合せがあった時期は、思い返せば懐かしいのですがホームページはまだ社長の手作りで、「ゴムの試作やります!」なんてことをうたっていました。今でこそ弊社のホームページは大きくリニューアルされ、「ゴムの試作」や「ゴムの研究開発支援」に力を入れていることがわかりやすく示されてますが、当時は素人の手作りだったので、今とは比べるべくもない内容でした。

     

    それでもホームページでの情報発信に力を入れ始めていたところなので、問合せはちょこちょこ来ていました。でもわが社としても初めての試みなので「売上にならない」「対応も慣れない」状態で、水面下でやっているような状況でした。

     

    そこへ九州大学という「ビッグネーム」からの問合せなので、こりゃモノにせにゃいかん、と技術部からの疑問は半分聞き流しつつ再び連絡を取りました。

     

     

     

     

    できます!やります!

     

     

    「技術部に確認したところ対応できます」とひとまずは回答。前向きな姿勢をアピールしました。

     

    今でこそ社名や規模で小躍りすることはなくなりましたが、「うちみたいな会社にそんなところから問合せがくるんやー」と考えただけでも緊張したものです。

     

    聞けば、他のゴムメーカーではほとんど話を聞いてくれなかったようで、自社のコンパウンド以外の配合は対応できませんと言われ、結構困っていらっしゃったようです。

     

     

     

     

     

    なんとかなりそう

     

     

     

     

    IMG_8448.JPGのサムネール画像

     

    わが社ではオープンロールというものを使ってゴムを練っています。オープンロールを使ってシート出しすることはもちろんですが、配合を自社でしているので混練りをしてゴム材料を作っています。

    材料は定期的に物性試験をするので試験用のシートも作ります。つまり、ゴム試験片(テストピース)を作る工程自体は日ごろの仕事としてすでに社内にあったのです。

     

     

    あとは配合の問題ですが、これも今までの経験からすると「なんとかなるだろう」というのが技術部の見解でした。

     

     

     

     

     

    値段のつけようがない

     

     

    ご要望の試験片を作ることができそうだとお伝えすると、だいたいのコストを聞かれました。しかし今まで量産品のパッキンを製造して納めていた私たちなので、日ごろの物性試験に使うゴム試験片(テストピース)に値段のつけようもありません。

     

    それでもこれまでの経験から概算価格を出し提示したところ、どうやら適正だったようで詳しい内容はまた後ほどということで、ここでひとまず落ち着きました。

     

     

     

    一週間後ゴム試験片(テストピース)の見積依頼がきてまたてんやわんやするのですが、それは次回に。

     

     

     

     

     

    この依頼をきっかけに私たちはゴム材料の開発支援という仕事を始めます。

    これはお客様の指定された配合で材料を練ります、というものです。100%配合指定される場合もありますし、この薬品を入れて欲しい(ベースは大体でいい)という限定的な依頼もあります。

    さらには加硫条件を振る場合もあります。JIS規格に規定される試験片は当然作ることはできますが、お客様独自で試験をされていてゴム試験片(テストピース)が特殊形状の場合も承ります。

     

     

     

    はじめのうちは何が何だか分からないことだらけでしたが、このお話をいただいてからゴム材料の開発支援ということがわが社の強みであるということに気付きました。

    いろいろとご要望にお応えするうちに、次々と持ち込まれる「こんなゴム試験片(テストピース)がほしい」という相談をいつも楽しみにしています。今では「これほどおもしろい案件はない」と感じております。

     

     

     

     

    (№2に続きます)

    カテゴリー:水素とゴムの話
  • 2015年04月01日

    材料開発の進め方(3)

    技術部の高橋です。

    今回は材料開発の進め方の一例として耐水素用材料開発の話をします。
    現状、水素用の材料は高温用にFKM、常温用にNBR、低温用にEPDM、

    高温~低温用にVMQといった材料が使い分けされています。

     

    この中で私たちはFKMとEPDMの高圧水素シール材の開発に携わっており、

    今回はEPDMの材料開発で実際に行った実験についてお話しします。

     

     

    その実験とは、実験計画法による『L9実験』や『L18実験』です。

    実験計画法とは、どのようにして効率的にデータを取るのか、

    そして、得られたデータをどう解析するのかに対する明快な

    回答を示してくれる統計的手法です。

     

    今回の場合、「-40℃の高圧水素ガスのシール材」という

    未知の材料作製において、2年半という短期間で目的のゴム材料が

    作製できたのも、この実験計画法を活用できたことにあったと思います。

     

     

    0~70MPaの加減圧が行われる環境で、-40℃にプレクール(冷却)された

    水素ガスをシールするためのゴム材料は、下記条件を同時に満たす必要があります。

    A 水素によって破壊されにくい
    B -40℃の環境でもシール性に影響しない耐寒性を有している

     

    開発当初、Aの条件については九州大学の西村先生がそれまでに行っておられた

    研究成果を参考にさせていただいて、早い段階で解決することができたのですが、

    Bの条件にかなり苦戦を強いられました。

    そこで実験計画法を活用してBの条件を解決することにしました。

     

     

    それでは実際に行った実験について,具体例と共に説明します。

    Bの条件、すなわちゴム材料の耐寒性を向上させる方法を調査するために、

    [フィラーの有無]・[ポリマーの種類]・[可塑剤の種類]・[可塑剤の配合部数]・

    [加硫剤の種類]・[加硫剤の配合部数]・[加硫温度]・[加硫時間]の因子を取り上げ、

    どの因子が耐寒性向上に効果があるのか、L18実験にて検討しました。

    15040101

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    検討方法としては、動的粘弾性試験を行い、各ゴム材料のガラス転移温度を測定し、

    ガラス転移温度を下げる効果がある因子を特定することとしました。

     

    計測因子として動的粘弾性の温度分散を用い、貯蔵弾性率の0℃~-70℃の

    範囲の温度依存性が小さいこと、すなわち低温における貯蔵弾性率が

    0℃における値からの変化が小さくゴム弾性を維持していることが理想機能と考え、

    温度による動特性によりSN比を求めました。

     

    動的粘弾性は30mm×2mm×1mm の短冊試験片を用いて、

    アイティー計測制御製DVA200s型により、周波数10Hz,、-150℃~200℃の

    温度範囲で測定しました。

     

    試験に使用する試験片は、表1に示した制御因子をL18直交表に割り付け、

    それぞれの配合について金型中で所定の加硫温度・加硫時間により成形しました。

    動的粘弾性試験の結果から、SN比算出法により、低温におけるシールの

    ための必要特性を分析しました。

    要因効果図を図1に示します。

     

    15040102

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    SN比は0℃~-70℃の範囲における弾性率の安定性を示します。

    すなわちSN比が大きいものほど低温における弾性率の変化が小さく、

    ゴム弾性を維持する配合であることを示しています。

     

    要因効果によれば,「ポリマー種」・「可塑剤種」・「可塑剤配合部数」の

    感度が高く、各因子間で差が出ていない加硫に関する因子は、ガラス転移温度に

    与える影響は少ないと考えられます。

     

    したがって、ゴム材料の耐寒性を向上させるには、ポリマー種及び可塑剤種と

    その配合部数が重要であることがわかりました。

     

     

    このような実験を行うことで、目的のゴム材料を作製するための要素を絞り込みます。

    そして、絞り込んだ要素について更に適正値を見極めるために再度実験を行ったりします。

     

    今回の開発においても更にL9実験を行うことで『ポリマーと可塑剤の相性』や

    『可塑剤の適正部数』などを見極めました。

    耐水素用の材料開発についてのお話では以上です。

    カテゴリー:その他
  • 2014年12月01日

    材料開発の進め方(2)

    前回はお客様がご希望される物性をクリアするために行う

    材料開発のお話をしました。

     

    今回は製品サンプル納入からお客様のもとで行われる試験の結果を受けて

    さらに改良をすすめるというお話をします。

     

    ときどきお取引先のお客様から

    「すでに量産している製品の材料を改良して性能向上を目指したい。」

    というご相談をいただくことがあります。

     

    こういった場合、

    1.目的と目標などについてお打ち合わせ

    2.材料の改良に着手

    3.既存の量産用金型もしくは試作用金型を使って製品サンプルを製作

    4.お客様のもとで性能試験

    という流れになります。

     

    2.の材料改良はお客様と協議しながら、

    配合のアレンジが可能な範囲で

    絞り込んでいきます。

     

    2014120104

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    3.のサンプル製作は材料の収縮率が近い場合や、

    仕上げ方法に問題がなければ既存の量産型を使用して

    製品サンプルを作ります。

     

    材料の収縮率が大きく違う場合や、

    仕上げ方法を変えないといけない場合、

    もしくは形状も変更する場合は

    試作金型を起工して製品サンプルを作ります。

     

    2014120101

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    材料の収縮率が大きく違うと

    製品の寸法が変わってきます。

    許容範囲内であればいいのですが、

    材料を改良することによって大きく変わる場合があるので

    事前に確認しておく必要があります。

     

    また、材料を改良したことでバリの仕上げが難しくなることがあります。

    量産型は改良前の材料に合わせた構造になっているからです。

    これも材料を変更することで仕上げにどう影響があるかを

    事前に確認しておく必要があります。

     

    これらの手順を踏んで製品サンプルが準備できたところで、

    いよいよ4.の性能試験となります。

     

    そして、その結果は基本的に〇×判定となります。

    ここが物性試験とは違うところですね。

     

    ×の場合は、結果をよく吟味して

    同じ考えのもと配合改良をさらにすすめるか、

    もしくは全く違うアプローチで配合を考えるか、

    などの検討をお客様とすすめます。

     

    そしてまた2~4の手順を踏んで評価をすすめる、

    ということになります。

     

    〇だった場合は、それはそれでいいのですが、

    改良した材料に量産性があるのかどうか、

    最後にしっかりと確認しておかなければなりません。

     

     

    2014120105

     

     

     

     

     

     

     

     

    性能が出たのはいいけれど、

    量産をしたら不良率が高くて

    とても採算が合わない、

    ということにはしたくないですね。

     

    以上、お客様の性能評価を受けて材料開発をする、というお話でした。

     

    次回は耐水素用材料をモデルに材料開発の進め方をご紹介したいと思います。

     

     

    カテゴリー:その他
  • 2014年11月17日

    材料開発の進め方(1)

    今回は材料開発の進め方についてお話します。

     

    材料開発には、お客様から新しい材料の開発を依頼されて

    おこなう場合と、社内で自主的に開発する二つのパターンが

    あります。今回は前者について、ご依頼を受けてからの流れを

    ご紹介します。

     

    お客様からの材料開発をご依頼いただく場合は、たいてい

    ご希望の物性があり、それをクリアすることが目的となります。

     

    この物性値は新規製品の図面に記載されていたり

    仕様書に記載されていたり様々です。

     

    要求物性は多岐にわたり、常態試験(硬さ・引張強さ・伸び)や

    圧縮永久歪み試験、熱老化試験、浸漬試験(耐塩素水性や耐ガス性)

    などがあります。

     

    高石工業では水回りやガス関係でお使いいただくパッキンの製造が

    得意ですから、耐塩素水性や耐ガス性についてご相談いただく

    場合もあります。

     

    ご依頼の窓口となるのは営業部で、開発は技術部が担当します。

    営業部へご相談いただくと、まずご希望の物性が既存材料で

    クリアしているかを技術部がチェックします。

     

    既存材料でご希望の物性を満足できない場合は

    材料開発となります。

     

    このとき、既存材料を改良する場合もあれば

    一から配合を設計するときもあります。

     

    「新材料を開発する」というのは華やかに聞こえますが

    実は材料開発はとても地道な作業になります。

     

    基本は、以下の手順で進めます。

     

    配合設計

    ●配合設計

    混練り

    ●混練

     

     

     

     

     

     

     

     
     

     

    生地裁断

    ●生地裁断

    シート成形

    ●シート成形

     

     

     

     

     

     

     

     

     
     

    ダンベル抜き

    ●試験片作成

    引張試験

    ●試験評価

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    結果が要求物性を満足できなければ

    またチャレンジを繰り返します。

    時間のかかる作業です。

     

    次回はお客様での評価を受けて、というお話をします。

     

     

    カテゴリー:その他
  • 2014年11月01日

    異形状のゴム製品の測定について

    前回、前々回はOリング形状の線径、内外径の測定についての

    お話でした。今回は、「測れない製品」として、写真1のような

    異形状(Oリング形状でない)のゴム製品の測定についてのお話

    です。

     

    14110101

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    このような形状のゴム製品は、容易に変形してしまうため寸法が

    安定しません。寸法が安定しないと測定が輪をかけて難しくなり

    ます。つまり、測定時の置き方(変形しないように置いたつもり

    でも自然に変形している)一つで寸法が極端に変わってしまいます。

     

    試しにこの製品をCNC画像測定システム(Nikon製)でn=5の

    測定を行ってみました。その結果を表1~3に示します。

     

     

    表1 短辺内径(mm)

     

    n1

    n2

    n3

    n4

    n5

    平均

    23.97

    24.23

    23.99

    24.60

    24.41

    24.24

    23.78

    24.27

    24.03

    24.56

    24.33

    24.19

    24.17

    24.34

    23.92

    24.34

    24.10

    24.17

     

    表2 長辺内径(mm)

     

    n1

    n2

    n3

    n4

    n5

    平均

    92.89

    92.89

    93.08

    92.79

    92.94

    92.92

     

    表3 半径(mm)

     

    n1

    n2

    n3

    n4

    n5

    平均

    7.20

    7.14

    7.23

    7.15

    7.06

    7.16

    7.08

    7.08

    7.07

    7.17

    7.22

    7.12

    7.09

    7.26

    7.05

    7.09

    7.35

    7.17

    7.17

    7.27

    7.17

    7.21

    7.01

    7.17

     

    14110102

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    各表の①~⑧は図1に示す場所を測定した寸法です。

    表1に示す寸法は短辺の内側の直径、表2に示す寸法は

    長辺の内側の直径、表3に示す寸法は4隅の内側の半径と

    なっています。

     

    表1の結果について、n5の測定で①~③の直径は

    23.78mm~24.60mmとなり、平均値が約24.2mmでした。

    仮に平均値を基準とした場合、±0.4mmの公差があったと

    しても公差外になる値があります。

     

    このように寸法が安定しない製品は測定自体が困難で、

    ばらつきが大きくなり、測定時の置き方次第で値が変化

    してしまいます。

     

    勿論、製品そのものは材料の収縮率を見越して製作された

    金型で手順通りに作っていますので、出来上がりに問題は

    ありません。

     

    異形状のゴム製品の測定についてのお話は以上です。

    次回は「開発の進め方」についてです。

    カテゴリー:その他
  • 2014年10月29日

    ゴム製品の径方向の寸法測定方法

    前回に引き続き、ゴム製品の寸法測定について紹介します。

    あるゴム製品を測定して必ずしも真値を測定できるとは限りません。

     

    例えば、外径・内径の測定の際にノギスを用いる場合、ノギスで製品を

    挟み込むということは僅かな力が加わり製品に変形をもたらしている場合が

    あります。

     

    変形を最小限にとどめる為に可能な限り製品への負荷を減らしても、

    0.01mm単位で見れば変化が出ているのです。このようにゴム製品に

    ついては測定方法により測定値に若干の差が出てくる場合があります。

    測定方法でどのような差があるのかを検証します。

     

    今回は様々な測定器具を用いてOリング製品の外径、内径を測定し、

    比較・考察をしました。用いるOリングは前回も用いた、硬さ40、60、80の

    JIS規格P-12のOリング3種です。

     

    そもそも外径とは、Oリングの外周を円とした時の直径になり、内径はOリングの

    内周を円とした時の直径になります。下の図1に外径と内径を示しました。

     

    14101501

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    まずは、ノギスを用いての測定です。

    14101504

     

     

     

    14101503

     

     

     

     

     

     

    図2.硬さ60のOリングのX方向の外径測定

     

     

    14101505

     

     

     

    14101502

     

     

     

     

     

     

    図3.硬さ60のOリングのY方向外径測定

     

     

    円形の製品を計測する際は少なくともX方向とY方向の二か所について測定し、

    その平均値を外径とみなしています。Oリングの外見は円形ですが、基本的には

    完璧な円ではないのです。

     

    図1ではX方向、図2ではY方向で外径を測定しました。X方向では16.50mm、

    Y方向では16.52mmとなり、これを平均した16.51mmが外径になります。

     

    次に内径ですが、図4のようにして測定します。内径もXYの両方向を測定して

    測定値を平均しました。

    14101506

     

     

     

     

     

     

    図4. 硬さ60のOリングの内径測定

     

     

    表1にデジタルノギスによる各Oリング製品の寸法をまとめました。

     

    表1. デジタルノギスによる各Oリング製品の外径と内径

    Oリング硬さ

    40

    60

    80

    外径(mm)

    16.57

    16.51

    16.49

    内径(mm)

    12.02

    11.82

    11.67

     

     

     

     

    次に、万能投影機を用いた測定です。図5は万能投影機の全体図です。

    14101507

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    図5.万能投影機の全体図

     

    機器中央にOリング製品を置き、下側から照射された光によって

    出来る影を利用します。画面上に拡大投影された製品の両末端の

    距離を測ることで外径・内径を測定します。

     

    投影された製品の拡大図のXY方向について基準となる線に

    Oリング末端を合わせ、手動で基準線をもう片方の末端に動かす

    ことで基準線の移動量から径の長さを測ります。

     

    図6では見づらいかもしれませんが、投影画面に十字の基準線があり、

    それにOリング末端を合わせています。

     

    14101508

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    図6.投影されたOリング

     

     

    14101509

     

     

     

     

     

    表2に、万能投影機による各Oリングの寸法をまとめました。

     

     

    表2. 万能投影機による各Oリング製品の外径と内径

    Oリング硬さ

    40

    60

    80

    外径(mm)

    16.69

    16.50

    16.50

    内径(mm)

    11.83

    11.67

    11.62

     

     

     

    次に、CNC画像測定システムを用いた測定です。

    CNC画像測定システムは図7のような装置です。

    14101510

     

     

     

     

     

     

     

     

    図.7 CNC測定システム

     

    機械の中央にOリングを設置し、上下から光を照射することで

    PC上にOリングの拡大図が映し出されます。

     

    1410151114101512

     

     

     

     

     

     

     

     

    外径を測定する場合は図8の赤線部分のようなOリングの

    外周の点を多く取ることで、取った点を全て通る円が自動的に

    算出されます。Oリングの外周円からなるべく均一に点を

    取っているため全体を平均された値が得られます。内径に関しても

    同様のことが言えます。

     

    14101513

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    図8.CNC画像測定によるOリング拡大図

     

    CNC画像測定による各Oリングの外径、内径を表3にまとめました。

     

    表3. CNC画像測定による各Oリング製品の外径と内径

    硬さ

    40

    60

    80

    外径

    16.65

    16.50

    16.49

    内径

    11.80

    11.65

    11.61

     

     

     

     

    最後に、各測定機器で得られた結果をまとめました。

     

    表4. 各測定方法によるによるOリング製品の外径と内径

     

    測定機器

    外径

    内径

    硬さ40

    デジタルノギス

    16.57

    12.02

    万能投影機

    16.69

    11.83

    CNC画像測定機

    16.65

    11.80

     

    測定機器

    外径

    内径

    硬さ60

    デジタルノギス

    16.51

    11.82

    万能投影機

    16.50

    11.67

    CNC画像測定機

    16.50

    11.65

     

    測定機器

    外径

    内径

    硬さ80

    デジタルノギス

    16.49

    11.67

    万能投影機

    16.50

    11.62

    CNC画像測定機

    16.49

    11.61

     

     

    今回の測定の結果を見ると、数値に違いが見られました。

    硬さ40のOリングに関しては、デジタルノギスで測定した

    場合の数値がほかの測定機器に比べて差が大きくなってしまいました。

     

    前回も述べました通り、デジタルノギスによる寸法測定は

    技量が必要になるため、測定の難易度が高いのです。

    その代わりに万能投影機やCNC画像測定機と異なり素早く

    測定が出来るという利点もあります。

     

    一方で万能投影機やCNC画像測定機は直接ゴム製品に

    触れることなくゴム製品の測定が出来るため、

    変形しやすいゴム製品などを変形が無い状態で測定できる

    という長所があります。

     

    このようにそれぞれの測定方法は一長一短がありますので、

    場合によって測定方法を使い分ける必要が出てくるのです。

     

    いかがでしたでしょうか。次回は測れない製品の寸法測定を紹介します。

    カテゴリー:その他
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